「ウェブ進化論」を読んでみた
夏風邪で倒れ、寝る以外にすることも無かったので以前に調達していた「ウェブ進化論」
(梅田望夫著)を読んだ。
「ウェブ進化論」の書評は、それこそあちこちのブログに山ほど掲載されているので
そちらを参照頂くとして、大筋として、「情報技術に関する必要十分な機能すべてを
コストを考えることなく手に入れることができる時代」になり、不特定多数無限大の
ネット参加者が作り出す民主主義な世界ってどんな感じ?と言ったところか。
もちろんそこに、キーワードとしての「ロングテール」や「ブログ」「Web 2.0」などが
挙げられるのだが、全ての情報がWeb空間に共有されることによる集合知が作り出す
新たな社会と、それを整理し尽くそうとする「Google」の存在が印象に残る。
いずれ、ネットを中心とした新たな価値基準の創造により既得権益を持つ旧勢力の
存在意義が薄れ、新たな経済圏が生まれるのだろう(というか、生まれつつある)。
タイトル副題である「本当の大変化はこれから始まる」ということを感じさせるに
十分な内容であった。
しかし、個人的に一番心に響いた一節がある。終章、梅田氏自身の回顧的な内容の
なかでの一節である。引用すると、
"たしかに「44歳の私」は、10年前「34歳だった私」に比べて、圧倒的にモノが
見えている。いろいろな経験を積んだ。たくさんの人を見てきた。でもモノが
見えている分だけ、新しいこと、未経験なことについて、ネガティブに判断する
ようになってはいないだろうか。これを「老い」と言うのではないのか。"
基本的に人間は、自分の進んできた道を肯定しがちな傾向があると思う。
すなわち、自らの経験を物差しとして、人の提案を明に暗に評価する。
もちろんこれはある程度は仕方がない。というか、経験があってこそ冷静に判断できる
ことも多いだろう。しかし、自らの経験を最優先するあまり、客観的な判断を見失っては
いないだろうか。
やはりエンジニアとして、いつでも客観的な判断や方向性を見いだせるだけの
「新たな経験」を継続的に獲得し続けることを心がけ、かつ、同僚や学生の話を
頭から否定することの無いよう、肝に銘じておきたい。